僕が思わず内定を出してしまった未経験者のポートフォリオ
2012年12月08日
私が勤める会社は、基本的には経験者のみを採用しています。未経験者を育てていきたいところではあるのですが、まだ規模が小さいので、人を育てる余裕も人員も足りないのが実状です。
しかし、未経験者に内定を出したことが一度だけあります。今回は、彼のポートフォリオがどのようなものだったのかご紹介したいと思います。
未経験者のポートフォリオの実態
Web制作会社にデザイナーとして就職するためには、ポートフォリオ(作品集)は必須です。私の勤める会社にも、多くの未経験者からの応募があり、ポートフォリオが送られてきます。経験者しか採用しないという方針ではありますが、そうした方のポートフォリオにももちろん目を通しています。
未経験者のポートフォリオに載っている作品は、以下のようなものがほとんどです。
- スクールの課題で作った架空の会社のサイト
- スクールの課題で作った趣味のサイト
- スクールの課題で作ったPhotoshopやIllustratorの練習のためのイラスト
- 自分のブログ
このような内容のポートフォリオは、会社の方針以前に、そもそも会ってみたいと思わせるものではありません。課題で作ったサイトを載せること自体は悪いことではありませんが、宿題をこなしたレベルの作品ばかりなのが問題なのです。
内定を出した未経験者のポートフォリオとは?
一方、私が内定を出した未経験者(20代後半の方)のポートフォリオは以下のようなものでした。
- スクールの課題で作った架空の会社のサイト
- スクールの課題で作った趣味のサイト
- スクールの課題で作ったPhotoshopやIllustratorの練習のためのイラスト
- 自分のブログ
- 飛び込みをして作らせてもらった雑貨屋のサイト
- 知り合いのフリーランスデザイナーから請け負ったランディングページ(商品を案内するための1ページもののサイト)
前半は他の未経験者のポートフォリオと同じです。面接を担当した私や社長が特に注目したのは、もちろん雑貨屋のサイトとランディングページでした。そのポイントは次の2つです。
- 雑貨屋のサイトは、スクールの課題だけでは実務のフローに沿ったサイトが作れないため、勉強のために作らせてもらったものであった。
- ランディングページは、少額ではあるもののキチンと費用をもらって作ったサイトであり、ダメ出しを何回も受けながら仕上げたとはいえプロの水準のデザインであった。
つまり、プロの仕事をすることを意識して勉強に取り組んでいたこと、経験を積めば責任をもってプロ水準の仕事を成し遂げる能力があることがわかったのです。
他の作品も、デザインは即戦力レベルではありませんでしたが、HTML5、jQuery、WordPress、レスポンシブWebデザインといった技術を積極的に使うなど、Web制作に対する向上心が伝わってきました。
面接後、社長とも話し合い内定を出すことにしました。結局、彼は他の道を進むことになり入社には至らなかったのですが、私自身も未経験者のポートフォリオに何が必要かということを改めて知ることができました。
ポートフォリオに載せる作品に必要なもの
作品作りのために必ずしもお金をもらって仕事を請け負う必要はありませんが、自分が実務で役に立つことをアピールするのがポートフォリオの役目であり、それは未経験者でも同じです。
私自身、スクール時代や転職活動中に意識したのはこのことでした。実際に課題で作ったサイトも、知り合いのお店に頼んで作らせてもらったり、スクールの課題の範囲にとらわれず独学で学んだ技術をふんだんに取り入れて作りました。また、課題とは関係なく勉強のために趣味のサイトを作ったり、講師が経営する会社の仕事を請け負ったりしました。
スクールの講師が宿題としてとりあえずOKを出した作品だけでは、プロとしての能力をアピールすることはできません。実務では、自分のデザインの評価者はお金を出すクライアントなのです。
ポートフォリオに載せる作品は、課題かどうかに関わらずできるだけ実務に近いサイトを自分にとって最高のパフォーマンスで作る心がけが必要です。実務的でないサイトを載せる場合でも、デザイン面、技術面、アイデア面であっと言わせるものが必要です。
こういうものを作ると必ず就職できるという王道はありません。
常に自分のベストをつくした作品を作っていくことを心がけましょう。