僕が30代でWebデザイナーになるまで(後編)
2012年11月17日
(前回の続き)
30代サラリーマンから心機一転、Webデザイナーをめざし、スクールに通い始めました。
20代の若者ばかりの中、正直浮いていたものの、スキルの習得や実務経験を積むことに力を注ぐ日々。
そんな中で、今も続く人とのつながりや、人生を左右する出会いもありました。
スクールを高評価で卒業!でも・・・
スクールの卒業制作では、幸いにもクラスでトップの評価をいただき、クリエイターズオーディションに出場する機会をいただきました。クリエイターズオーディションとは、制作会社の人事担当者が集まる中で、自分の作品をプレゼンすることができるイベントです。その中でも、トリを務め、かなりの高評価をいただきました。
こうして、Web業界でもやっていけると自信をつけ、会社を退職し、転職活動を始めました。
しかし、現実はそんなに甘いものではありませんでした。やはり30歳を越えた未経験のデザイナーを採用する制作会社はなかなかありません。ディレクターとしては採用したいけど…というお話しがほとんどでした。
というのも、ほとんどのWeb制作会社のデザイナーは20代が多く、歳上の新米デザイナーに指示を出したり教えたりするのはやりにくいと感じてしまうのです。また、大幅な減収を覚悟していたとはいえ、給与もネックになっていたと思います。
転職活動中、何度もディレクターをめざした方がいいのではと悩みました。実際にディレクターとして好条件で内示をいただいた会社もありましたが、どうしてもデザイナーへの道をあきらめられず、転職追活動を続けました。
やっと見つかった転職先
そんな中、エージェントから紹介いただいた会社がありました。その会社は、派手なクリエイティブの実績はありませんでしたが、大手企業のコーポレートサイト構築の実績が多くあるWebコンサルティング会社でした。この会社は、未経験の私を、デザイナーとして、しかも満足の行く給与で採用してくれたのです(もちろん、今までより大幅に減収となりましたが)。
後から振り返ると、私がこの会社に採用された要因は、次の3点だと思っています。
- Webコンサルティングがメインの事業であるため、デザイナーと言えどもIAなどの論理的思考能力やクライアントとのコミュニケーション能力が必要とされ、学歴、職歴が評価された。
- コンサルタントを中心とした経験をつんだプロフェッショナルな社員が多く、Web業界としては平均年齢が高かった。(配属された部署のデザイナーはみんな私より年上でした)
- スクール時代にできるだけ実務に活かせそうな作品を作り、ポートフォリオに載せた。
この時の転職活動では、たまたま学歴と今までの経験を活かすことができましが、Web制作会社への就職にあたっては、学歴は必ずしも重要ではありません。むしろ、実務経験と実績が重視されます。ただ、未経験からの転職の場合、前職での経験が活きる場合もありますので、積極的にアピールしたほうがよいでしょう。
また、制作会社はクリエイティブ力ももちろん重要ですが、他にも考慮すべきポイントがいろいろあります。(詳しくは、追い追い書いていきたいと思います)制作実績の派手さばかりにとらわれずに、幅広い視野で考える必要があります。
一方、今までに作った作品ももちろん重要です。Web業界にでの転職は、即戦力が求められます。未経験といえども、できるだけ実務に近い作品を数多く作るといいでしょう。
晴れてWebデザイナーに!しかし・・・
こうして、晴れてWebデザイナーになったのですが、スクールをトップの評価で卒業しても、現場ではまったくの素人同然でした。
Webデザイナーという職種は、本当に実力主義だと思い知りました。プロデューサーやディレクターは、私が「デザイナー」という職種だからデザインの仕事を依頼するわけではありませんし、クライアントは私が「デザイナー」という職種だからデザインに納得してくれるわけではありません。いいアウトプットを出せるかどうか、その信頼があるかどうかがすべてなのです。
経験のない私は、はじめはナビゲーションやパーツのデザインばかりしていました。Webデザイナーとして認められる(信頼される)と自分で感じるようになるまで、1年半くらいかかったと思います。
更なるステップアップを求めて
Webデザイナーになってから3年くらいが経ち、収入もようやく以前の会社と同水準になったころ、スクールで知り合った講師の方からメールがあり、自分が勤める会社に来ないかとのお誘いを受けました。
この会社は、当時10人程度の小さな規模でしたが、米国の有名なクリエイティブ・エージェンシーに勤めた経験があり、カンヌやクリオなどの受賞歴もある米国人クリエイティブ・ディレクターが在籍するなど、勢いのある会社でした。
まったく転職など考えてもいなかったので、散々悩みましたが、自分のステップアップを考え、転職を決意しました。その会社が現在の勤め先です。
この転職を振り返ると、人とのつながりの大切さをつくづく感じました。3年近く連絡をとっていなかった方から、メールをいただき、今の会社への転職につながったのです。また、前述のとおり、スクールのクラスメートとは今同じ職場で働いています。
Web業界につながりのないの方は、スクールなどを活用して、積極的に人脈を広げることをオススメします。先ほども書きましたが、スクールの費用は決して安いものではありませんし、スキルの習得だけを見ると、独学でも良いかもしれません。しかし、私は人との出会いを手に入れただけでも高い学費を払う価値があったと思っています。
転職を振り返って思うこと
今の仕事にはおおむね満足しておりますし、何よりも自分がやりたい仕事をやっているので、モチベーションを高く保つことができます。私個人としては、転職して良かったと心から思っています。
もちろん、向き不向きもありますし、この業界の取り巻く環境は厳しく、労働時間や給与の面で苦労をされている方がたくさんいるのも事実です。ですから「Webデザイナーをめざそう!」と誰にでも言うつもりはありません。むしろ、めざしている方には十分慎重に検討することをおすすめします。
しかし、本当にWebデザインが好きで、Webデザイナーになるための努力を惜しまないのであれば、30代だからといってはじめからあきらめることはないと思います。
私が今の仕事ができているのは、自分の努力もありますが、家族の支えと人との出会いがあったからです。今思えば幸運でしたし、私を支えてくれた人たちには、今でも感謝しています。そういう意味では、私の経験がそのまま他の方にはあてはまらないかもしれませんが、同じ道を選んだ方の参考になればと思っています。